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[OSASK 00048] Re: 簡易質問


  こんばんは、川合です。


FORM-Akkie さんは 2006/10/15 20:56:46 の「[OSASK 00047] 簡易質問
」で書きました:

>1.これからOSASKはどういう方向に行こうとしているのですか
>2.アプリの互換性を一時的に放棄する必要があるのはなぜですか
>3.KHBIOSやKHDOSはどうするのですか
>
>1.については良く分かりません、開発予想の方も全然更新されていません。

  いずれの問いもそれぞれ微妙に関係しており、さらに長い説明が必要
と思われたため、需要が出るまで(=今回のように知りたいという明確
な意思表示があるまで)あえて書かないことにしていました。したがっ
て開発予想を更新していないは意図的なものです。

  要点をかいつまんでまとめることもできるのですが、それだと次々と
それを掘り下げる質問が出て、結局は全部言うことになると思います。
それは二度手間になるので、最初から要約せずに書くことにします。

---

  既存のOSが386の設計者の意図を正しく理解していない、386の機能や
性能を生かしきれていない、それなら僕が僕なりの解釈でOSを作ろう、
というのがOSASKの開発動機の大きな要素でした。

  それゆえなんらかの新しい機能を実現することよりも、まず386の性
能を出し切ることが優先され、まだまだ完成には程遠いものの、この点
についてはそれなりの成果を上げたと思っています(386というCPUの潜
在能力を示すことはできた)。

  一方、OSASKがまだver.1.0に行かないうちから、この方針に対する批
判がありました。つまり386という特定のCPUに強く依存してOSを作るの
は愚かなのではないか、ということです。・・・この意見に対する僕の
考えは、386やその後継互換CPUを使ったPCは安価で入手しやすいけれど
そのほかのCPU機は高価だったり性能が386に及ばなかったりするから、
とりあえず他のCPU向けにOSを書く気がしない、この状況が変わったら
そのときに考える、それまではとりあえず386しか選択肢がないから、
これに依存しても問題はない、むしろその方が性能が出る、というもの
でした。

  ここで少し先回りして結論を言えば、つまりはこの批判の意見が正し
く、僕の当時の見解は浅はかだったということになります。

---

  とにかくOSASKは386依存を前提に開発が進みました。そうしてみると
僕が「PCでこんなことをしたい」と考える多くのことは、OSASKを前提
にすれば、ほとんどマシンパワーが要らないということが分かってきま
した。メモリも少しでいい、CPUのクロックももっと押さえていい、HDD
も要らない・・・などです。その分筐体を小さくして、消費電力を下げ
、ファンレスで、物理的稼動部を減らして寿命や信頼性を上げ、コスト
ダウンしたマシンこそ理想に思えてきたのです。

  それで「がちゃぴんPC」構想が生まれて、VIAのEDENやAMDのGeodeLX
が理想のCPUに非常に近いということになりました。それで(これはお
おやけには言っていなかったかもしれませんが)OSASKはこれらのCPUや
ファミリーチップセットに特化して、デバイスドライバを優先して整備
しようという計画もありました。

  ええと言うまでもないと思って書いていませんでしたが、極端なこと
を言えばOSASKは僕が使うためのOSを作るプロジェクトであって、他の
ユーザとか社会の需要とか趨勢(すうせい)とかは全くどうでもいいの
です。僕が386に感動してほれ込んでいる間は386依存になるのは当たり
前ですし、僕がGeodeLXしか買わないと決めてしまえばGeodeLXに依存し
ていくようになるのは問題ありません。・・・もちろん、OSASK計画は
僕が使わない機種のことも想定に入っていますから、それらの機種向け
にも将来は対応していくことになりますが、とにかくまず優先されるの
は、僕個人の需要です。

  そしてそれを分かってもらった上で、もしこんなOSで良ければ使いた
い人が使えばいいし、ほんのちょっとの修正で他の人の役に立つような
らそれもやりましょう、ということです。

---

  僕はOSASKを、オープンソースカンファレンスやIPAXで発表する機会
を与えられました。またいくつかの大学でOSASKに関して講演もしまし
た。そういう場で必ず話題になるのは、OSASKはなぜ386にこだわるのか
、OSASKの良さは組み込み系(たとえばARMやSH)でこそ生かされるのは
ではないか、ということでした。これはOSASKのネットワーク対応に対
する質問の何倍もありました。

  そして僕の回答もお決まりのものでした。それらのCPUを使った開発
機がPCのように安価に出回って、僕やコミュニティのみんなに行き渡れ
ば、OSASKがそれらのCPU向けに開発されることも十分ありうるけれど、
現状ではこれらのキットは(性能の割には)明らかに高価で、しかもキ
ットだから自分で組み立てないといけない、だから当分は組み込み系に
はいけないと思う、というものでした。

  ・・・しかしこの状況を打破するちょっとしたきっかけがありました
。任天堂のゲームボーイアドバンスです。オークションで見てみたら、
(GBA-SPやNintendoDSのリリースのおかげもあって)中古のGBA本体の
値段は3,000円くらいになっていました。しかも調べてみたら、

  CPU: ARM7TDMI 32bit 16.78MHz
  RAM: 32KB+256KB (+カートリッジ用のメモリ空間が32MB*3)
  VRAM: 96KB
  ディスプレイ: 240x160 15bpp (2.9インチTFT)
  サウンド: ステレオPCM音源 DMA転送
  シリアルポートあり
  最大消費電力: 0.6W

というとんでもない機械だと判明しました。これはどんなARM7のキット
よりもお買い得だということで入札&落札し、ちょっとずつARMの勉強
をしました(ARM用のコードを出力するASKAを試作してみたりもした)
。

  特に感動したのは、0.6Wという消費電力でした。僕の消費電力の感覚
では、CPU単独で5Wくらいは使ってしまうのが相場であって、他のチッ
プ(チップセットやビデオチップやメモリなど)を入れたら10Wくらい
にはなるものだと思っていたのです。そしてさらにディスプレイのため
の電源も必要でしょう。しかしGBAはやってくれました。液晶への電力
も含めて合計0.6Wとは!

  確かにメモリはあまりに少ないし、クロックもかなり低いですが、
ARMは汎用レジスタが16本あり、これをうまく使えば20MHzの486くらい
の速度が出せそうな気がしてきました。メモリだってカートリッジを自
作すれば増やせるかもしれません。・・・今のOSASKが486SX-20MHzの
TOWNSでまあまあ使えていることもあるので、このスペックは僕として
は「使えるかもしれない」圏内だったのです。うちの486TOWNSの速度の
ボトルネックは明らかに表示回りなのですが、GBAはTOWNSよりもディス
プレイの解像度が小さいので、結果的にディスプレイへの負荷が減り、
クロックが劣る分は取り返せる可能性がさらに上がります。

  ということで、386のAT互換機よりもARM7のGBAのほうが、僕にとって
は理想のCPUなのではないかと、遅まきながら気が付いたのです。しか
も数人のOSASKコミュニティの中学生や高校生に聞いてみたところ、GBA
(もしくはその互換機)の所有率は結構高く、これ向けに開発するのは
悪くなさそうです。

  ここまでの話だけだと、OSASK ver.5.0はGBA専用になるのかと思うか
もしれませんが、そうではありません。話はもっと複雑なのです。

---

  OSASK ver.5.0への話はまだ続くのですが、忙しいので続きは後日書
きます。


  それでは。

--
    川合 秀実(KAWAI Hidemi)
OSASK計画代表 / システム設計開発担当
E-mail:kawai !Atmark! osask.jp
Homepage http://osask.jp/

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