こんにちは、川合です。 ええと、土曜日と日曜日は、未踏ユース関係の会議(?)に出席して きました。そこでOSASKのプレゼンテーションをshibai0aを使ってやっ てきて、おおいに笑っていただいて、また、とても多くの肯定的なご意 見をいただくことができました。このプレゼンテーションの資料はshib ai0の一般公開時にはバンドルします。 そこでたくさんの意見をもらっていろいろ考えているうちに、僕は僕 自身がもっとクリアにOSASKを考えられるようになったと思います。そ れを少し書きます。 今まで僕は、OSASKが限定された方面にとんがることに主眼をおいて いました。だからコンパクトさとか速さとかを少しでも犠牲にするよう な要望は一貫して後回しにしてきました。そのおかげで、OSASKは将来 的な価値のあるOSになりした。逆に言えば、「どの分野においてもぱっ としないOS」になることを避けてこれたわけです。だからこそ、OSASK はずっとファンを獲得し続けて、コミュニティーを拡大し続けられたわ けです。 たとえば来年度の計画の、えせじゃないファイルシステムの構築も、 「速さ」をさらに特徴づけさせるためのものです。OSASKの特徴である メモリレスアーキテクチャーを実現することでもあり、つまりOSASKの 価値をさらに引き上げるものです。 しかしいっぽうで、今やっているGO計画や1月から予定している高解 像度対応などは、これとは方向性が違います。仮に順調にOSASK上でGO が動いたとしても、それは他のOSでもできていることをできるようにし たにすぎません(まあそりゃあ、世界最小のgcc-3.2になるかもしれま せんが)。また高解像度も、Windowsにできなかった解像度が使えるよ うになるわけではありませんし、描画がWindowsよりも速くなったりす ることもありません(まだアクセラレータが使えないので)。 これらは、「OSASKを実用的にするための方針」といえます。 振り返ってみると、僕はだんだん方針をミックスするようになってい ました。最初は、とがっている部分をよりいっそうとがらせようとしま した。しかし僕自身が早く自身のメインOSにしたいということもあり、 GOや高解像度対応を検討してきたわけです(800x600というのはやっぱ り狭いですよね)。 --- さてここから先は、僕の新しい方針に関する説明です。 僕は、OSASKの実用的側面をもっと急いで強化するべきではないかと 思いはじめています。とがった部分が一つあるなら、とにかく使いたい というニーズはあるのです。しかし今は機能が不足しているために、使 いたいけど使えないという状況です。だから、もう、えせでもなんでも いいので、使えるようにする方がいいんじゃないかと思います。 具体的には、ファイルシステムのまともな設計をとりあえず放棄して HDDやCD-ROMをえせサポートし、そしてネットワークサポートを急ぎま す。ネットワークもえせでいいのです。とにかく、僕が作業の大半をOS ASK上でこなせればいいという、実に明確な目標です。新しい予定では 、来年度いっぱいで、メールとチャットくらいがなんとかできる、とい うレベルにしたいです。えせだらけで大変なことになっているかもしれ ませんが、それはその先に少しずつ直していきます。何といっても、僕 自身が常にベータテストするようなものですので、安定性や信頼性はど んどん向上するでしょう。今よりももっと実用的なAPIの整備も進むで しょう。エミュレーターだって早く作りたいと僕自身が切実に思うよう になるでしょう。 とがった部分がたくさんあっても、結局使えなければ駄目なんじゃな いかと悟ったのが、今回の変更の最大の原因です。使えて、その上でと がった部分があれば、それはとてもアピールになるわけです。 先の未踏ユースの会議ではたとえばディスクレスでも多くの機能をサ ポート可能そうなOSASKにたいへんな関心が寄せられました。それは組 み込み分野では大変重要なことなのです。ディスクがなくなれば振動に 強くなり、また寿命も延びます(組み込みは分野によっては24時間365 日つけっぱなしです。HDDの寿命も軽視できないようでした)。そうい う用途を考える人たちにとっては、HDDのサポートなんてとりあえずど うでもよくて、とにかくTCP/IPなどのプロトコルが使えるのかどうかが 重要なのです。 もしこのように特定の組み込み分野で使ってもらえれば、OSASKの周 辺でお金が動くことになり、OSASKへの注目は上がり、パソコン用OSと してのOSASKにも興味を持つのは当然です。考えてみてください、パソ コン用のOSとして設計されたのに、それがほとんどそのままPDAや組み 込み用途に使えそうだというのは、すごいことです。 しかし僕としては、組み込みにしか効果がないようなカスタマイズを 直接手がけることはしません。たとえば、x86以外のRISC用に書き直せ ば組み込み向けとしては絶大な魅力になるかもしれませんが、それはパ ソコン向けOSとしてはほとんど意味のないことです。それは他の人がや って、なんならその人がお金持ちになればいいわけです。協力するとし てもせいぜいアドバイスくらいでしょう。・・・まあ、僕がお金に困っ たら純粋に仕事として僕自身がやることもありえますが、そういう事が ない限り、僕は主にパソコン用OSとしてのコーディングに力を注ぎ続け ます。 まあ基本スタンスは変わらないということです。「脇道にはそれない 」「今ある形でできることをやる」「あれができたらいいのになあ、に は極力応じない」「自分がほしいものは自分で何とかする」・・・だか らこうすれば組み込みで有利なんだけどなあ、とか、こうすればサーバ ー用途で有利なんだけどなあ、とかは後回しです。実際に無理矢理サー バーとして使っている人がいて、さらにある機能を付加しようとして苦 労しているような場合限って応援するわけです。 そんなわけで、僕が当初の目標を投げ出して、「パソコン向きの速く てコンパクトでエミュレータがいっぱいあるOS」をあきらめたりするん じゃないかと不安になったりはしないでください。少しの遠回りはある かもしれませんが、この最終目標はなんら変わりません。どこから実装 するかの順序が変わっているだけです。 --- 以上、僕としてはもうほとんど決心に近いのですが、しかし反対意見 があるのでしたら、それは拝聴します。なんなりとご発言ください。賛 成意見も歓迎します。 それでは。 -- 川合 秀実(KAWAI Hidemi) OSASK計画代表 / システム設計開発担当 E-mail:kawai !Atmark! imasy.org Homepage http://www.imasy.org/~kawai/