[OSASK 5464] 開発方針.

  こんにちは、川合です。

  ええと、土曜日と日曜日は、未踏ユース関係の会議(?)に出席して
きました。そこでOSASKのプレゼンテーションをshibai0aを使ってやっ
てきて、おおいに笑っていただいて、また、とても多くの肯定的なご意
見をいただくことができました。このプレゼンテーションの資料はshib
ai0の一般公開時にはバンドルします。

  そこでたくさんの意見をもらっていろいろ考えているうちに、僕は僕
自身がもっとクリアにOSASKを考えられるようになったと思います。そ
れを少し書きます。

  今まで僕は、OSASKが限定された方面にとんがることに主眼をおいて
いました。だからコンパクトさとか速さとかを少しでも犠牲にするよう
な要望は一貫して後回しにしてきました。そのおかげで、OSASKは将来
的な価値のあるOSになりした。逆に言えば、「どの分野においてもぱっ
としないOS」になることを避けてこれたわけです。だからこそ、OSASK
はずっとファンを獲得し続けて、コミュニティーを拡大し続けられたわ
けです。

  たとえば来年度の計画の、えせじゃないファイルシステムの構築も、
「速さ」をさらに特徴づけさせるためのものです。OSASKの特徴である
メモリレスアーキテクチャーを実現することでもあり、つまりOSASKの
価値をさらに引き上げるものです。

  しかしいっぽうで、今やっているGO計画や1月から予定している高解
像度対応などは、これとは方向性が違います。仮に順調にOSASK上でGO
が動いたとしても、それは他のOSでもできていることをできるようにし
たにすぎません(まあそりゃあ、世界最小のgcc-3.2になるかもしれま
せんが)。また高解像度も、Windowsにできなかった解像度が使えるよ
うになるわけではありませんし、描画がWindowsよりも速くなったりす
ることもありません(まだアクセラレータが使えないので)。

  これらは、「OSASKを実用的にするための方針」といえます。

  振り返ってみると、僕はだんだん方針をミックスするようになってい
ました。最初は、とがっている部分をよりいっそうとがらせようとしま
した。しかし僕自身が早く自身のメインOSにしたいということもあり、
GOや高解像度対応を検討してきたわけです(800x600というのはやっぱ
り狭いですよね)。

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  さてここから先は、僕の新しい方針に関する説明です。

  僕は、OSASKの実用的側面をもっと急いで強化するべきではないかと
思いはじめています。とがった部分が一つあるなら、とにかく使いたい
というニーズはあるのです。しかし今は機能が不足しているために、使
いたいけど使えないという状況です。だから、もう、えせでもなんでも
いいので、使えるようにする方がいいんじゃないかと思います。

  具体的には、ファイルシステムのまともな設計をとりあえず放棄して
HDDやCD-ROMをえせサポートし、そしてネットワークサポートを急ぎま
す。ネットワークもえせでいいのです。とにかく、僕が作業の大半をOS
ASK上でこなせればいいという、実に明確な目標です。新しい予定では
、来年度いっぱいで、メールとチャットくらいがなんとかできる、とい
うレベルにしたいです。えせだらけで大変なことになっているかもしれ
ませんが、それはその先に少しずつ直していきます。何といっても、僕
自身が常にベータテストするようなものですので、安定性や信頼性はど
んどん向上するでしょう。今よりももっと実用的なAPIの整備も進むで
しょう。エミュレーターだって早く作りたいと僕自身が切実に思うよう
になるでしょう。

  とがった部分がたくさんあっても、結局使えなければ駄目なんじゃな
いかと悟ったのが、今回の変更の最大の原因です。使えて、その上でと
がった部分があれば、それはとてもアピールになるわけです。

  先の未踏ユースの会議ではたとえばディスクレスでも多くの機能をサ
ポート可能そうなOSASKにたいへんな関心が寄せられました。それは組
み込み分野では大変重要なことなのです。ディスクがなくなれば振動に
強くなり、また寿命も延びます(組み込みは分野によっては24時間365
日つけっぱなしです。HDDの寿命も軽視できないようでした)。そうい
う用途を考える人たちにとっては、HDDのサポートなんてとりあえずど
うでもよくて、とにかくTCP/IPなどのプロトコルが使えるのかどうかが
重要なのです。

  もしこのように特定の組み込み分野で使ってもらえれば、OSASKの周
辺でお金が動くことになり、OSASKへの注目は上がり、パソコン用OSと
してのOSASKにも興味を持つのは当然です。考えてみてください、パソ
コン用のOSとして設計されたのに、それがほとんどそのままPDAや組み
込み用途に使えそうだというのは、すごいことです。

  しかし僕としては、組み込みにしか効果がないようなカスタマイズを
直接手がけることはしません。たとえば、x86以外のRISC用に書き直せ
ば組み込み向けとしては絶大な魅力になるかもしれませんが、それはパ
ソコン向けOSとしてはほとんど意味のないことです。それは他の人がや
って、なんならその人がお金持ちになればいいわけです。協力するとし
てもせいぜいアドバイスくらいでしょう。・・・まあ、僕がお金に困っ
たら純粋に仕事として僕自身がやることもありえますが、そういう事が
ない限り、僕は主にパソコン用OSとしてのコーディングに力を注ぎ続け
ます。

  まあ基本スタンスは変わらないということです。「脇道にはそれない
」「今ある形でできることをやる」「あれができたらいいのになあ、に
は極力応じない」「自分がほしいものは自分で何とかする」・・・だか
らこうすれば組み込みで有利なんだけどなあ、とか、こうすればサーバ
ー用途で有利なんだけどなあ、とかは後回しです。実際に無理矢理サー
バーとして使っている人がいて、さらにある機能を付加しようとして苦
労しているような場合限って応援するわけです。

  そんなわけで、僕が当初の目標を投げ出して、「パソコン向きの速く
てコンパクトでエミュレータがいっぱいあるOS」をあきらめたりするん
じゃないかと不安になったりはしないでください。少しの遠回りはある
かもしれませんが、この最終目標はなんら変わりません。どこから実装
するかの順序が変わっているだけです。

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  以上、僕としてはもうほとんど決心に近いのですが、しかし反対意見
があるのでしたら、それは拝聴します。なんなりとご発言ください。賛
成意見も歓迎します。


  それでは。

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    川合 秀実(KAWAI Hidemi)
OSASK計画代表 / システム設計開発担当
E-mail:kawai !Atmark! imasy.org
Homepage http://www.imasy.org/~kawai/


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