[osask 6812] Re: Jenny2.

  こんばんは、川合です。


I.Tak. さんは 2003/12/22 19:43:46 の「[osask 6811] Re: Jenny2.」
で書きました:

>> ・「誤差という観点でも、等高線が入る位置はi系ではなくn系がベスト
>>   である」という主張が可能であるという指摘。>主にI.Tak.さん向け
>
> 要するに絶対誤差はパレットを最適化したn系の方が小さいよ、という
>ことですね。

  なんでそうなるかな。・・・いやもちろん、I.Tak.さんが理解した点
も論点の一つではあります。

  僕が言及しているのは、次の点です。

1.(仮に)絶対誤差重視でパレット選択のところからアルゴリズムを
    構築すれば、必然的にn系と同じ位置に等高線が来る。

2.これはi系とn系をくらべてどうのこうのというのではない。絶対誤
    差こそすべてだという観点で最上のものを作ってみた。そしてそれ
    が、(たまたま)n系と同じ位置に等高線が出ると分かった。

  ・・・つまり、僕の直感で得られた「等高線の位置はここにあるべき
だ」という感性は、それなりには合理的な説明が可能だ、といいたいだ
けです(それなりには、ですよ)。I.Tak.さんは合理的な説明を欲して
おられたようでしたので、紹介しようかなと。

  本気で絶対誤差を論じるのであれば、結局今はパレットが最適化され
ておらず、I.Tak.さんのいうとおり「宝の持ち腐れ」です。というか、
僕は誤差第一主義じゃないので、結局僕にとってもそれほど重要な話で
はありません。

> 絶対誤差よりも相対誤差の方が重要であるというのが私の考えです
>(普通の人ならそう考えると思いますが)。だから川合さんの指摘は私には
>いささか的外れであるように思えます。

  それは、I.Tak.さんが冷静でないからです。なんでそんなに必死に弁
護しているんですか?

  僕はこの論点を、i系が駄目だということのために引き合いに出して
いるわけでありません。そういう見解もありうるという主張です。忘れ
ないでください、I.Tak.さんは客観的にi系のほうが優れているという
主張であり、僕はそれと同じ程度の別の観点が存在することを示せばそ
れでいいのです。I.Tak.さんの主観と一致しなくてもいいのです。だか
ら主観で反論されても、ねえ。

  I.Tak.さんはここで相対誤差を挙げて、相対誤差のほうが重要だと言
っています。僕も実はその観点に大賛成であります。だから、僕にとっ
ては絶対誤差で優れているといっても、別に嬉しくはありません。

---

  ところで、例えば輝度が[0, 0.1)の範囲しかないけど100段階あると
いうのと、輝度がちゃんと[0, 1)の範囲で50段階あるというのとでは、
どちらを「良い」と思うかはそれほどには自明でないように思います。
・・・この説明じゃ分かりにくいかな。じゃあ、具体例を出します。

  A社の液晶ディスプレイとB社の液晶ディスプレイのどちらを買おう
か悩んでいます。値段や外観は同じなのです。違うのが、明るさと、階
調の細かさです。

  A社のは世間で普通に売られているディスプレイとよく似たスペック
なのですが、B社のはそれよりも階調が2倍もあり、グラデーションが
より美しいというのが特徴です。しかしその液晶素材が光に弱いという
致命的な問題があり、このディスプレイはめいいっぱい明るくしても、
普通のディスプレイの1/10ほどの明るさにしかなりません。

  さてこのとき、I.Tak.さんがいうところの「普通の人」は、みんな当
然のようにB社のディスプレイを買うのでしょうか。僕は買わないと思
いますがねえ。

  僕も誤差というなら相対誤差派ですが、しかしだからといって、いか
なる状況でも相対誤差のほうが優先されるのだ、とは思っていません。
S/N比とか、精度にかんする「抽象的な一般論」を持ち出していろいろ説
明してくれましたが、一般論に飛躍する前に、僕たちが減色(もしくは
色の再配分)をやっていることを忘れないでください。

  だから、僕は減色において絶対誤差を重視する人がいてもいいとは思
います。それも相対誤差に負けないくらいの、十分に有力な観点の一つ
だろうと思います。だから小柳さんは、[OSASK 6731]でその点を指摘し
てくださったのだと思っています。減色において、絶対誤差と相対誤差
を比べて、どちらかが客観的に優れているということは、簡単に言い切
れるものなのでしょうか。

---

  僕は、「コントラストの上げ下げは、変換誤差とは別のもの」と考え
ています(飽和しなければ、ですが)。したがって、僕にとっては、n
系の変換による相対誤差は、パレットの設定を変えても変えなくても同
じだと考えています。そんなわけで、僕の今の理解はこうです。

・本質的な相対誤差はn系とi系とで同じ。
・i系は数学的に素直で、余計なことはしてない。
・n系は僕好みのエフェクト(コントラストup)が入っている。
・コントラストupをやめると、n系も数学的に素直になる。
・n系はコントラストupのエフェクトをキャンセルしたときに、
  絶対誤差最小と同じ結果になる。i系はそういうことはない。

  I.Tak.さんにとっては、今のn系のパレット設定だと飽和しているよ
うにみえるのでしょう(つまり、結局パレット値を気にしているわけで
す)。それにコントラストupという操作も、減色処理の一部であって、
これは分離して考えるべきではないと主張するかもしれません。そうで
あれば、変換誤差はエフェクト後と比較して考えるので、n系はi系より
も相対誤差が大きいというでしょう。そして「だから駄目」というでし
ょう。

  しかし、そんなI.Tak.さんも、たぶん、i系とn系の結果を絶対誤差最
小と「見比べた場合」、n系ほうが「普通の人にとっては」印象が近い
という点は否定できないでしょう(普通の人は等高線の位置も一応見ま
すよ)。さらに、「相対誤差が等しいなら、絶対誤差が小さいほうがい
いよ」という人がある程度いることも否定できないでしょう。そういう
観点では、i系よりも絶対誤差最小のほうが好まれるでしょうし、それ
ゆえに絶対誤差最小との「印象」の差がより小さいn系のほうがいいと
いう主張をする人が出てくることを否定できないと思います。

  だから、誤差の観点だけで議論しても「i系が客観的に優れている」
と言い切ることはできず、どちらが優れているかは主観的な問題でしか
ないのです。I.Tak.さんが、「私は相対誤差のほうが圧倒的に重要だ」
と個人的な主観を繰り返しても、なんにもなりません。

> 相対誤差を最小に保ったままで出力振幅が最大になり、しかもタイリング
>の細かさによらないでパレットを最適に設定できるのがi系です。高速モード
>と非高速モードのどちらを優先してパレット設定するべきかなど悩む必要は
>ありません。

  そのとおりです。それがi系の良さなのです。

  パレットをいじっても絶対誤差最小にならないけれど(それくらい絶
対誤差最小系との見た目の違いは大きいけれど)、その代わり、それと
はまた別の、好ましい性質をいくつか獲得しているわけです。

  見た目の違いが大きいというのは、n系とくらべたときの相対的なもの
であります。はっきりいって3つとも同じようなもの、という人もいると
思います(この観点では、n系とi系の優劣なんていう話は全部どうでも
いいということなのですが)。

> 結局最適なパレットに設定しないのであれば宝の持ち腐れです。

  これが小柳さんの主張なのだろうと思います。それとも今の小柳さん
はまた違うのかな。

>>   もしn4でパレットの値を0x40と0xc0にすれば、さらにn8でパレットの
>> 値を0x20・0x60・0xa0・0xe0とすれば、小柳さんや、相対誤差に目覚め
>> る前のI.Tak.さんは、(高速モードに関しては)大いに満足すると思わ
>> れます(ただし、I.Tak.さんは他の点で異論があると思います。n4で中
>
> 最初から、誤差というのは特に断らない限り相対誤差のことだと思って
>いましたが。普通、誤差は小数点以下何桁のところにあるか分かるように
>書きますからね。3.14±0.01×10^3 といったぐあいで。

  ご自分の過去の発言を忘れてしまわれたのですか?

  僕が一番最初に、i系のアルゴリズムをパレットに依存した絶対誤差
的な方法で説明した頃のことを言っているのです。

  僕は、I.Tak.さんのドキュメントにもかかわらず、あえてパレットに
依存した説明をしました。それこそ、I.Tak.さんの意図だろうと思った
からです。そして僕がパレットを00・40・80・c0にしたらどうするんだ
と言ったら、それならc0で飽和させる、みたいに答えたじゃないですか
(しかも他のツールを見て減色はそういうものだと思っていた、とまで
書いてありました・・・だから僕の話に誘導されたとも思えません)。
つまり僕は、I.Tak.さんが自覚していた以上に、I.Tak.さんの意図を理
解していたわけです(この点に限れば)。

  しかしその後I.Tak.さんは、僕と同じの、パレットによらず色域をめ
いいっぱい使うという観点に転向して(そしてi系アルゴリズムは、ど
ちらの観点からも満足しうるものだった)、今に至っているわけです。
つまり、これより前は、減色において相対誤差を重視しようとは考えて
いなかったと思います。というか、I.Tak.さん自身も、これに前後して
主張を変えたと明言されていましたし。

  過去の自分が、今の自分の気に入らない主張をしていたとしても、そ
れはちっとも恥ずかしいことではありません。今の見解が重要であって
、過去の見解は参考でしかありませんから。理解が進んでいる証とも言
えるくらいです。・・・むしろ、過去の発言をなかったかのようにいう
ほうが恥ずかしいと僕は思います。・・・まあたぶん、わざとではなく
単に忘れてしまったのでしょう。


  それでは。

--
    川合 秀実(KAWAI Hidemi)
OSASK計画代表 / システム設計開発担当
E-mail:kawai !Atmark! imasy.org
Homepage http://www.imasy.org/~kawai/

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